1981

GOODNIGHT SAIGON/
BILLY JOEL

/FROM NYRON CURTAIN(BILLY JOEL)
まさか、鉄のカーテンが壊れるなんてこれがでたころは、思わなかったな。もう壊れてからずいぶんたつ、時代の変わりは早いもの。でも、いろんな事件の中で命を落としていった人の死を無駄にしてはいけない。ビリージョエルは、自分の世代の若者がベトナムに行って、死んでいったことを真正面から取り組もうと書いた曲。それまでの彼は、ピアノマンや、素顔のままでのようにニューヨークの夕暮れみたいな曲や、よきアメリカのロックンロールみたいな曲が多かった。ここでは、ヘビーな題材を切々と歌う彼の姿がある。稀代のメロディメーカーである彼だから、それでもしっかりと聞かせる。
 この曲は、地獄の黙示録を彷彿とさせる効果音を使い、アコースティックギターをバックに切々と若者たちの活きた姿を映し出している。彼がどういうスタンスにたって政治的な歌を歌っているのかはよく知らないが、「10万人死にました」とか言う言葉に麻痺して、一人一人の死を見つめていない自分にそれぞれの死や思いを伝えてくれる。
 うたれて死ぬ若者、爆弾で死ぬ現地の子ども、爆撃で引き裂かれる女の人、そして、生きて帰っても自分の心をこわしてしまった人。一人一人が傷ついている。そのことを忘れないようにと、ビリージョエルは、2000年を迎える時間に行ったライブの中でも、この曲を演奏し、21世紀にこんなことがもう決してないようにと祈っている。

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